即時現金化できる質屋風アプリCASHと類似サービス メルカリNOW発表。違いや経緯まとめ

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「即時現金化できる質屋風アプリCASHが一時査定ストップ。法的見解とまとめ」として、ご紹介していましたが、CASHがDMMに70億円で買収されること決まったこと、メルカリがメルカリNOWという類似サービスを始めたことを受け、コンテンツをリニューアルしてCASHとメルカリNOWの比較を含めてご紹介します。(追記:2017年11月27日、初稿:2017年6月30日)

CASHとは

CASHとは、ブランド商品やiPhone等をリストから選び、商品を撮影することにより、即時査定が完了し現金化が可能になるアプリです。発表後、ネットでは人気検索ワードランキングにランクインし、革命的な扱いをされていました。取り上げ方が賛否両論となっておりますので、まとめてご紹介します。

CASH(キャッシュ)が生まれる前の世の中の状況ーメルカリ現金化問題とZOZOのつけ払い

メルカリ現金化問題は記憶に新しいのではないでしょうか。現金を出品し、現金の価格よりも高値で現金を買うという行動は、貧困によりその日暮らしの重要性が高まっているということも示しています。

またZOZOはGMOと組んだつけ払いの機能により、若者が支払いに苦難する姿も話題になりました。これまでのの取引の信用を元に、支払いを先延ばしにすることで、欲しいものを手に入れることもできる様になりました。セールなどでどうしても買いたいけれどもクレジットカードを持っていない若者にとっては嬉しいサービスになっています。

一般的に安定した収入がないとクレジットカードは利用できません。家族カードとして付帯カードとして手に入れることもできますが、親の付帯カードを自由に使っていい状態になっている人は少ないのではないでしょうか。

CASH(キャッシュ)の仕組みと利用価値

CASHはブランド名を選んで、状態を選択し、写真を撮るだけで査定価格が決まります。ゆえに、メルカリの様に、出品しても値段設定によっては売れずに現金化できない・・・といったことを避けることができます。しかし、取引上限は2万円になっており、本当にその日暮らしの生活費に当てるという利用価値になると考えられます。

CASH from Bank, Inc on Vimeo.

出典:公式サイト/vimeo

一般的なサラリーマンにとっては、その日暮らしというのは考えられないという人もいるかもしれません。2017年6月27日発表の日本銀行調査統計局「2017年第1四半期の資金循環」によると、2017年3月末の日本の家計の金融資産計は1,809兆円ありますので、2017年4月1日推計の1億2679万人で割ると、1426万7686円が一人当たり平均の金融資産となります。金融資産には、債務証券、投資信託、株式等、保険・年金・定型保証なども含まれていますので、同様に現金と預金だけに絞ると、一人当たり平均の現金預金は735万737円となります。この統計だけみると家計にはお金がある様に思えます。

しかし、総務省による2016年の家計調査報告(貯蓄・負債編)二人以上の世帯における貯蓄残高によれば、貯蓄が100万円未満の世帯が10.5パーセントいることがわかります。なぜか、一人世帯も含めた統計が見当たりませんが、おそらくシングルマザー・ファザーや大学生、高齢者などの一人世帯も含めると貯蓄100万円未満世帯はもっと増えるのではないでしょうか。
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出典:2016年の家計調査報告(貯蓄・負債編)

一部の貧困層向けビジネスとして、あるいは若年層向けビジネスとして、即時現金化であったり、支払い先延ばしというビジネスが成り立つ様です。マイクロファイナンスとも呼ばれる様ですが、ネット上でフィンテックをもじった貧テックと言っている人もいらっしゃいました。

CASH(キャッシュ)は合法なのか

この質屋風アプリCASHは、法の抜け道よって実現されたと言っても過言ではないビジネスとなっています。

通常、貸金業法の上限金利は20%に制限されています。このCASHは二ヶ月までの返金による手数料は15%となっています。1万円出金したら11500円を返せば良いことになります。例えば、繰り返し利用し、年間6万円借りると、返済合計は69000円になってしまいます。

通常の貸金業法に則ると、同様に6万円借りても返すのは61200円になリますので、その差額は7800円。ディズニーなら1回、安い飲み屋なら2回、激安居酒屋なら3回行けるかも?

質屋のようでありつつ、質屋でもありません。質屋営業法にあわせた質屋としての営業ではなく、古物商なのです。つまり、買取専門のリサイクルショップを運営しているということにしています。仮に質屋だった場合は月に9%の利子は問題ありません。1日で返せば1日分の利子を払えば良いのが質屋です。しかし、今回は2ヶ月まで15%の手数料ですので、1ヶ月でも15%となり、質屋営業法を超えることになります。

このカラクリとして、写真を送ることで、一度買取を行い、それをキャンセル料として15%を支払う仕組みとしているそうです。

アプリ上でキャッシュにするという処理を行うタイミングで、CASHがユーザーからアイテムの買い取りを行う。そのために、買取アイテムのキャッシュを即座に支払いする。実際の買い取りまでには2カ月の猶予を置いており、その期間内に商品を送る(キャッシュを返さない)か、買取をキャンセル(手数料をつけてキャッシュを返す)するか、ということなのだという。このスキームを実現するために、バンクは古物商許可を取得している。

このスキームについて「監督省庁とは話していない」(バンク)そうだが、弁護士とも法律上問題ないことを確認した上でサービスを提供している

出典:techcrunch

果たして、法律的に本当にくぐり抜けることができるのでしょうか?buzzfeedによると、吉井和明弁護士の見解として、以下の点を紹介している。

  • 実質的には担保付きの貸金となるのではないか
  • そもそも、中古品を流通させたいのに、肝心の品物をユーザーのもとにとどめておく必要はありません、これが単なる中古品の流通であるという言い訳自体が、相当不自然と思われます
  • UI(ユーザーインターフェース)が返金が前提とする形式をとっていれば、そのことからも、貸金のためのアプリであると考えられます
  • 金銭の貸付けや、貸借の媒介を業とするためには、『貸金業者の登録』が必要です。無登録で貸金業を営むと、処罰されます

出典:buzzfeed

写真をとって即時買い取ったということが認められるのかどうかが肝になると言えるかもしれません。

一方顧問弁護士は、 森・濱田松本法律事務所とのこと。弁護士同士のお互いどの様に感じているのか気になるところです。

弁護士ドットコムが森・濱田松本法律事務所への取材を試みたところ、回答についてさし控えるという返答があったということであり、誰がどの様な根拠で問題ないという見解を示したのかは謎のままとなっている。

「当事務所は大勢の弁護士が所属して職務を行っておりますが、弁護士としての守秘義務との関係で、個々の案件や企業に関することについては、関与や受任の有無にかかわらず、回答を差し控えさせていただくことになっております。ご照会いただきました件につきましても、同様の対応とさせていただきたく、あしからずご了承いただけますと幸いに存じます」

出典:弁護士ドットコムニュース

また、ゴゴ通信が金融庁に聞いたところによると、貸金業法に該当しており、株式会社バンクは貸金業者への登録がないという回答となっており、明言されていない。

  • 出資法となると二条の部分は預かり金となるので、貸しだしとはまた違って来る
  • 出資法そのものになると管轄は法務省
  • 今の話ですと(CASHは)貸金業法になると思いなり、貸金業法になると私ども(金融庁)の管轄
  • 貸金業者の登録を見ても株式会社バンクでは登録されてない

出典:ゴゴ通信

金融庁担当者は明言していない様ではあるが、「貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案要綱」によると、5年の懲役になる恐れもありそうです。

貸金業規制法違反の無登録営業等に対する法定刑を、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれの併科(法人は、300万円以下の罰金)から、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれの併科(法人は、1億円以下の罰金)に引き上げること。(貸金業規制法第47条及び第51条関係)

出典:金融庁

まとめ

現在、査定をストップしている様ですが、それまでにキャッシュ化された金額は3億6629万3200円です。2ヶ月以内に買取のキャンセル手続きがされる割合がどの程度かわかりませんが、仮に全ての返済があれば、15%の手数料5494万3980円が手数料として収益になります。平均キャッシュ化金額は5031円ですので、72796回中10921回分のキャッシュ化した人が仮に逃げてしまっても、問題ないということになります。(運営費や開発費を無視しています。)果たして1万人の悪人はいるのでしょうか?

出典: プレスリリース

【追記】CASHが買い取りを再開

2017年8月24日(木)に買い取りが再開されました。1日にキャッシュできる金額が表示されるようになり、1日1000万円を上限に買い取りを行っています。

出典:プレスリリース

瞬間的に買い取りが終了してしまうという話もあり、かなりの需要があるようです。

【追記】CASHがDMMへ70億円買収されることに決定

買収は2017年10月31日に合意され、買収金額は70億円。プレスリリースによると、DMMグループのサービス基盤、人材、資本などを活用して拡大成長を目指すとのことであり、DMM会員に対してのリーチの拡大や資本投入により買取額の増額などが考えられます。

出典:プレスリリース

DMMにはいろいろレンタルのカテゴリもあり、買い取ったものを貸し出したりする可能性も考えられます。また、東洋経済による片桐社長の発言によれば、亀山会長は「CASHで買い取ったスマホをアフリカで売るぞ~」と張り切っているそうですので、さまざまな展開が考えられそうです。

出典:東洋経済

【追記】CASH類似サービスがメルカリNOWがメルカリ内で開始。CASHとの違い

TechCrunchによる記者会見のサマリ-をかくにんしたところ、メルカリNOWとCASHの違いは大きくないようにみえる。

CASHが市況のデータから事前に商品ごとの見積もりをデータ化しているのに対し、メルカリNOWでは「メルカリ」の取引データを参考に査定金額を算出する。ゆえに、納得感の高い金額を提示可能だという。

一方査定金額の上限2万円や1日の上限買取額1000万円という部分は変わらない。

写真を取ると、その場で即金ということは同じである。一方、CASHは現金になるが、メルカリは発表内容としてはメルカリ内の買い物への利用となっている。

集客面では、CASHはプレスリリースやSNSでのバズによって話題になった上、現状はSNS広告を積極的に発信している。一方メルカリはメルカリ内で新規のタブを作ることにより集客は容易となっている。この差がどのような結末になるのかを見守っていきたい。

出典:TechCrunch

一方、DMM会長の亀山敬司氏はツイッターで、エールを送っていました。

【追記】メルカリ関連の過去のニュース

メルカリはシェアサイクル事業として2017年9月7日メルチャリの開始を公表しています。
メルカリがシェアサイクルに参入で戦国時代へ。シェアサイクル事業者まとめ

その直後である2017年9月8日にDMMがシェアサイクル事業に参入を発表しています。
DMMもシェアサイクルに参入へ。その名は「DMM sharebike」。次の参入表明企業を徹底予想

DMMとメルカリは業態は違うものの、CtoC物販に関しては犬猿の仲といえるかもしれません。

メルカリのこれまでの事業はというと、フェイスブックがフリマ機能をリリースして脅威は増えています。
フェイスブック フリマ機能をリリース!メルカリ・ヤフオク・ジモティーの脅威に

ライブコマースの活況も脅威です。
ライブコマースLive Shop!はメルカリに勝てるのか?Live Shop!驚異のCVRとは。株式会社Candee 執行役員 鍛冶良紀氏登壇イベントレポート
ライブコマースはメルカリでも導入が始まっています。

マネーロンダリングについては、警察の指導もあってか、現状では様々な対策をされています。当時のマネーロンダリングの話については以下の記事をご参照ください。
メルカリの闇。現金出品マネーロンダリング、本のフリマ メルカリカウル…全部まとめ

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