2017年度決算で12月期の決算が公表されてきています。その中で、ガリバーITベンチャーであるDeNA、グリー、クックパッド、カカクコムの業績に異変が発生しています。なぜそうなってしまったのか、決算報告資料をもとにまとめました。
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DeNA(ディー・エヌ・エー)決算
DeNA(ディー・エヌ・エー)はの決算は四半期売上で、338億円から322億円へと、前年同期比5%の減少となっています。部門別の売り上げ推移の概観については表での提供となっていたためPressPlatinumにて作成しました。
グラフでもわかるように、収益の大半を占めているのはゲーム事業です。しかしそのゲーム事業も直近の四半期ベースで連続した下落を続けています。新規事業に15%の人員を割いて取り組んでいるといいますがなかなか順調な拡大ができていないようです。ゲーム以外の部分から取り上げていきます。
ディー・エヌ・エーは報道にあるように、DeNAパレットと呼ばれるMERY、iemo、WELQをはじめとする自称キュレーションプラットフォームの10媒体の休止にともない、減損損失39億円を計上しています。内訳としてMERY運営会社ペロリで27億円、iemoが8億円などののれん代を処理した形となっています。
また、ショッピング事業となるDeNAショッピングは四半期で14億円の売上計上をしていますが、KDDIへの売却により、次の四半期からはショッピングの一部が除外されることとなります。
主力となる国内ゲームについては国内のブラウザゲームでの利用が、四半期で昨年255億円だったものが、182億円へと大幅下落をしています。アプリ内課金128億から157億円に上昇しているものの、ブラウザゲームの下落をまかなえる上昇を見せておらず、384億円から339億円へと下落してしまいました。
海外ゲームはまだ規模は小さく、ゲームコインの消費は昨対比で減少しています。
ゲームの下落、自称キュレーションプラットフォームの完全停止、ショッピングの売却となり、残る事業は野球と自動運転が目立つところとなっています。ほかにもkurasure(クラシュア)という保険提案アプリもリリースしていますがIRには見えてきません。
また任天堂の決算発表においてDeNA以外との提携を示唆する発言が君島達己代表取締役社長から出たことによりマリオという最強のキャラクターが永続的に収益に寄与しないという可能性もでてきたことにより、株価が下落しています。
将来的には、スマートデバイスビジネスの状況や、お客様がどういうものをお求めになるかによって、(DeNA以外の)他社さんにもサポートをお願いする可能性は否定できませんが、今現在、特定の企業と提携が進んでいるという事実はございません
自動運転については上場見送りとなりかつツイッター上で元従業員が告発しているZMPとの提携を終了し、日産との提携を発表しました。
内部で自浄機能が動いているということでしょうか。
※ZMPについては、元従業員の方のツイッターしか情報源がないため、細かいことはわかりませんし、提携終了との因果関係は不明です。
いくつか特徴的なツイートを紹介しておきます。
ZMPの主な製品はプレスリリース。夢のあるプレスリリースを出して、投資をしていただき、提携していただく。そして大きな提携先を持っていることを材料に、さらに大きな提携先を得ていく。それがビジネスモデルなわけです。技術を育てるつもりはありません。
— 元ZMPの発言 (@exZeroMoment) 2017年1月1日
自動運転用OS「IZAC-OS」とかいうプレスリリース出したけどなーんもやってません。組み込みのLinuxとか知ってる人にはわかると思うけど、自動運転で今開発しなきゃならないのはOSではない。
— 元ZMPの発言 (@exZeroMoment) 2017年1月1日
2016年3月18日、高速道路で走行テスト中、手動運転に切り替えてもハンドル操作が効かなくなるということがありました。うまく減速し停止できたため事故には至らなかったのですが、運転者だけでなく周囲の車も巻き込んだ惨事に至りかねない状況でした。
原因は「ケーブルが抜けていた」— 元ZMPの発言 (@exZeroMoment) 2016年12月31日
繰り返しますが因果関係は不明です。しかしDeNAは2017/1/6に業務提携解消を発表しています。元ZMPの発言 (@exZeroMoment)さんの発言を一通り読ませていただき、ZMP内部の話としては具体性があったため、ご紹介させていただきます。もし寄稿等がありましたら、掲載希望の方向け問い合わせフォームからご連絡ください。
次はグリーの決算報告書からグリーの異変についてまとめです。
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グリー決算
グリーの決算は、
売上高は前四半期比で4年ぶりの増収、4億円増加の153億円
という報告のメッセージとなっています。
しかし、現状は四半期ベースでみたときの前年同期比では181億円の売り上げから154億へ27億円の減少となっている。ゲームについては短期での変動が大きい事業であるため、四半期で増加している状況が継続していく可能性もあります。
しかし、ゲーム内利用するコイン消費については低迷が続いています。
新規事業として、広告メディアの他、住まい、ヘルスケア、VR等の動画について投資を行っているようですが、従業員1460人中ゲーム担当が1050人を占めており、これらの新規事業担当は200人となっています。また大きく育っているサービスは見られないということともいえます。先日3ミニッツという動画メディアを買収しましたが、M&A等を含め今後投資によってV字回復ができる日がくるのか、長い目で見る必要がありそうです。
次はクックパッドの決算報告書からクックパッドの異変についてまとめです。
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クックパッド決算
クックパッドについては、穐田誉輝さんと佐野陽光さんの確執により、佐野さんが現在の社長に戻っていますが、それに伴い14社を売却して、レシピに専念する戦略に舵を切りました。その結果どうなったのかという決算となっています。
海外レシピについては、英語圏、スペイン語圏、インドネシア語圏、アラビア語圏において27億円の減損損失を計上し、インドでのレシピサービス、クックパッドベビー、産地直送便について、8億円の減損損失も計上している影響により、売り上げは右肩上がりになっているものの四半期で営業赤字となっています。
「金融費用」(営業外)に計上した持分法適用に伴う再測定による損失の金額13億円となっている穐田誉輝さんによるTOBによるみんなのウェディングの売却もありました。しかし、売上の前年同期比で最も高い売上上昇率だったのが、みんなのウェディングを含む「その他インターネットメディア事業」でした。前年同期比46%増加となっています。
確かにレシピの会員事業は前年同期比35%増加となっています。そこをけん引しているのは、レベニューシェアの大部分を占めるであろう「dグルメ」です。dグルメは食べログやABCクッキングスタジオと合わせてライトな会員になれるサービスであり、四半期で3億円から7億円の収益へと増加しています。クックパッドの独自会員事業は15億から17億へ伸びているものの、増加は比較的緩やかなもののようです。決算報告書のグラフと独自に作成したグラフを並べて紹介します。
広告事業は四半期前年同期比で微減となっていることも、見逃せません。すべての広告商品で横ばいか下落となっています。12月はクリスマス商戦で食品メーカーが広告を本来は出したい時期のはず。その中で内部の争いが過熱し、広告出稿を控えた食品メーカーがいたのかもしれません。あくまで推測の域は出ませんが、タイアップ広告についてはDeNAの記事の悪評に影響されてネットの広告は許さないという食品メーカー上層部の意思決定があったということも想定されるのではないでしょうか。
ディスプレイ広告やネットワーク広告はアクセス数に応じた収益になることが多いですが、月次利用者数が増加しているのにもかかわらず、広告収益がおちているということは一人当たりのPVが下落していたり、あるいはスマホシフトが進んだ結果、利用者数を収益化にうまく転換できていなかったり、一人当たりのPV数が下落してしまっているなどの原因も考えられます。
海外を含めた料理関連の潜在市場規模は兆円規模であることを指摘しています。
飲料食品に関する市場規模を考えると、金融機関も利用する業種別審査事典によると200兆円から250兆円とも推計されているのだそうです。その中でクックパッドが対象とする領域を拡大していけば、可能性は秘めているとも考えられます。
一時2500円を超えていた株価は現在1000円程度。創業者でもある佐野さんはユーザー、クライアント、株主、従業員ともに幸せにできるのでしょうか。料理動画の攻勢もあり、逃げ切れるのか気になるところです。
次はカカクコムの決算報告書からカカクコムの異変についてまとめです。
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カカクコム決算
上場来増収増益を続けてきたカカクコムですが、いまだに増収増益は進んでいます。しかしその増収増益の速度は鈍化しており、価格.com事業におけるデジタルコンシューマ機器市場の不振が想定を上回っており、これに関連する広告受注が減少していることにより、下方修正を実施することになってしまいました。
カカクコムはこれまでに紹介してきたDeNA、グリー、クックパッドとは若干異なる様相です。DeNAやグリーはゲーム事業が中心で新規立ち上げを頑張っています。クックパッドはレシピから生活へシフトしたのちレシピへ回帰しグローバル戦略へとシフトしています。カカクコムはというとすでに価格.comと食べログという2本の収益の柱ができています。そこに加えて新興メディアを複数立ち上げ育成中という最中のようです。
価格.comからまとめていきます。
価格.comの売上は、クリック数や販売実績に応じた、掲載店舗からの手数料収入を示す「ショッピング」、ブロードバンド回線の契約等に応じた手数料収入、自動車保険、金融、中古車検索等の見積もり、資料請求等に応じた手数料収入を示す「サービス」、バナー・テキスト広告・コンテンツ・検索連動広告等の広告収入を示す「広告」に分かれます。デジタルコンシューマ機器市場の不振により、ショッピングは25億円から24億円へと前年同期比94%に減少し、広告は14億円から12億円へと前年同期比87%に減少しています。一方サービスについては15億円から18億円へと前年同期比119%に増加しています。
デジタルコンシューマ機器市場の下落について各社の直近の決算状況を確認すると、以下のような下落が見られました。
- キヤノンは7.4%の下落。(2016年4Q売上高は前年同期1兆426億円から 9652億円へ)
- 京セラは7.2%の下落。(2017年3月期 第3四半期累計売上高で前年同期1兆930億円から1兆146億円へ)
- パナソニックは2.6%の下落。(2016年度第3四半期連結売上高で前年同期19,338億円から18,826億円へ)
- シャープは13.8%下落。(2016年度第3四半期連結売上高は前年同期6633億円から5715億円へ)
-
富士通は4.4%下落。(2016年度第3四半期連結業績売上高は前年同期1兆1669億円から1兆1154億円へ)
出典:各種直近決算報告書より抜粋
※あくまでも企業全体の売上のため、デジタルコンシューマ機器の正確な見立てではないことをご了承ください。
しかし、デジタルコンシューマ機器市場の下落という外部要因を理由に下方修正を行ってしまうと、今後も同様の理由の下方修正が懸念されてしまうのではないでしょうか。
サービス事業の増加の要因はSIMが前年同期比170%に増加しており、海外wifiも前年同期比180%に増加していることや、マネー関連事業の好調があげられるそうです。
海外の価格.comがあることはご存知でしょうか?累計ですでに1000万人の月間利用者がいるpriceprice.comというサイトがあります。どの国も順調に拡大を続けているようですので、今後世界で通用するカカクコムになるのかもしれません。
さて、有料課金をしなかった店舗が3点に落とされたと叫んでいたことで認識の誤りであることIRで出していた食べログですが、状況を確認してみます。
以前、食べログの予約サービス利用人数が1000万人を突破したことはお伝えしました。順調に利用者数を伸ばして1月に1200万人を突破したそうです。驚きなのが、国内食べログ月間利用者数が9346万人となっています。日本人口超える勢いです。
実は、実際超えるかもしれないのです。国内食べログ月間利用者数というのは小さく注釈が書いてありますが、ブラウザベースでカウントした人数ということですので、家庭のパソコンと仕事場のパソコンとスマホアプリとスマホサイトと使っている人は4人ということになるのです。
政府統計 の総人口,日本人人口(平成25年10月1日現在) を利用して確認すると、12歳から76歳までの人口合計がちょうど1億人くらいです。なので、一人で2か所くらい使うことを想定すると、中学生から76歳の方まで全員がスマホとPCなど2か所で使えば、国内食べログの月間利用者数は2億人程度まで増える可能性はあるということになるようです。
カカクコムには現在21ものサービスがあるようです。各種サービスを伸ばすことで、再び高い成長率へとジャンプアップできるのか見ものです。
出典:カカクコム 2017 年 3 月期第 3 四半期決算説明資料
おわりに
昔からあるサービスを運営するガリバー大手ITベンチャーであるDeNA・グリー・クックパッド・カカクコムの状況をご紹介しました。世の中にどんどん新しいサービスが生まれてくることにより、利用者が使える時間を奪い合う結果になっています。そのためある程度業績が横ばいになっていき下降を始めるのは当たり前のことかもしれません。その中で新規事業に売り上げの中心がシフトしたのはモンスト運営のミクシィであり、AbemaTVやゲーム等運営のサイバーエージェントだともいえます。
一般に導入期・成長期・成熟期・衰退期という成長フェーズを経ると言われます。その中で、成熟しきる前に得られた利益を使って、導入期となる新規サービスを立ち上げたり、M&Aにより成長期企業を仲間に取り込んだりということを行って、企業が拡大していきます。
一方で戦略を誤り社会的に悪影響のでる事業を買収してしまったのがDeNAと言えるかもしれません。成長させるためと思ったのに既存事業に悪影響を与えては意味がありません。ガリバー企業になればなるほど、社長の意思決定が重くなっていくともいえると思います。
コンシューマ機器市場に元気がない中、日本の成長を支えるのは、ヘルスケア、AI、VR等の動画、IoT、フィンテックなどともいわれます。これらをガリバーITベンチャーが取り組みを進めることで、より使いやすいサービスになるでしょう。
今後の動きを要チェックです。
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